ゲイルズバーグの春を愛す?/ジャック・フィニイ

以前の回で短編『愛の手紙』について書きましたので、今度は次に興味を惹いた三編をお薦め順に。


『大胆不敵な気球乗り』

ストーリー:
サンフランシスコ沿岸のマーチン郡に住むチャールズ・バーグは、ある日空を舞う鷹を見上げて、気球で空を上昇したいという強烈な感情のとりこになってしまった。百科事典にある気球の項目を読み、構造や操縦法を理解した。買ってきた布と身近な素材で気球を作り、湾岸を上昇する。降りるとき犬を散歩させていた近所のレニダス夫人に出くわすが、次回飛行する時に、彼女に懇願されて、夜間の気球飛行を一緒に楽しむようになる。

感想:
読後、映画『メアリー・ポピンズ』や、他の気球が出てくる作品を思い出してしまいました。
著者は勿論気球について入念に調べた上で、この短編を書いたのでしょうけど、本当にこのような飛行が可能なのか信じられません。うだつのあがらない主人公の男性の願望のような、幻想に満ちた作品に仕上がっています。
大人に童話めいた話を読み聞かせするのは躊躇しますが、悩める人の枕元で聞かせたいような…。



『おい、こっちをむけ!』

ストーリー:
サンフランシスコの新聞社で書評を担当しているピーター・マークス。彼は友人の売れない作家マックス・キンジェリーがもう亡くなっているのに、ミル・ヴァレーの街中を歩いているのを目撃していた。その時彼はイニシャルがついた派手なムギワラ帽子をかぶっていた。その後妻を伴って、再び彼を目撃した時の服装は、同じイニシャルがついた派手な上衣だった。町の人々もまた彼を目撃していた。

ピーターは、かつてマックスが住んでいた家に行ってみた。書きかけの古いタイプ用紙を見つけた彼は、妻と出かけたドライブの途中、大きく岩肌に書かれた彼のイニシャルを発見する。これは死んだマックスが、世間の目を向けさせるために、沈黙の叫び(「おい、こっちをむけ!」)をあげているのだと彼は思った。

その年の春にふたたび訪れた彼の墓に、すばらしい花崗岩の墓石が立っているのを見つける。表面には、マックス・キンジェリーと深く刻まれていた。墓地を出たところの仕事場にいた石工は、彼に頼まれたと告げ、請求書を差し出した。

感想:
本書で最も怪談の色彩が強い短編でした。
死者に出逢う恐怖感は、「ねじの回転」のヘンリー・ジェイムズに匹敵するかもしれません。この手の話を好む読書家なら、もっと比較に適した作家が該当するでしょう。ラストに遂に目的を達した作家と、主人公の関係が(請求書に)良く現れているなーと思いました。
読後何となく、街の雑踏に故人となった同級生か、親戚を発見しそうな雰囲気を感じ、ぞっとしました。



『クルーエット夫妻の家』

ストーリー:
建築家の私が保存していた1880年代の家の建築設計図の通りに、新築の家を希望した若き富豪のクルーエット夫妻。腕利きの大工や職人達は仕事が気に入り、張り切って仕事を進めた。私も夢中になり、家は完成する。
無垢の権化のような、19世紀を再現した素晴らしい家に移ると、夫妻は外出をしなくなり、服装も当時のままに、優雅な古い暮らしを楽しむようになる。

感想:
あらすじは違えど、全体のイメージから、内田善美氏の漫画『星の時計のリデル』の世界を思い出しました。家には設計書の段階でも憑き纏うスピリット(これは神秘的であり、怪異やおどろおどろしさはない)があるのですね。



端折ってしまった他の併載小説も、ぜひ。

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(2011/04/26更新)
ジャック・フィニィ『盗まれた街
侵略SFの名作。
映画化は1979年「SF/ボディスナッチャー」2007年「インベージョン」等
(劇場未公開ビデオ発売1956年「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」1993年「ボディ・スナッチャーズ」もあり)
他フィニィ原作の映画は、allcinemaに。



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ありがとうございます。
以前のブラッドベリもそうですが、短編小説(掌編も含めて)には、読者を虜にする魅力が詰まっているのだとつくづく感じました。但し、古今東西のどの短編もいいという訳ではなく、自分に合う作家や作品を、時間をかけて選ぶ必要はありますね。今回は本屋での偶然が引き寄せた縁に恵まれて、本当に良かったです。


今年は更新少な目でしたが、多くの閲覧・訪問を頂き、本当にありがとうございます。映画はDVD鑑賞やランダムなイベントが多く、映画館で観た感想が少なかったのが、残念です。
来年もよろしくお願い致します。
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こだわりの映像作品(DVD、劇場映画、TV)他についての感想と雑記です。

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